〖蠍座シーズン:冥王星のコラム〗

太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星。太陽系の天体たちは、それぞれのペースで12星座を巡っています。天体にはそれぞれの働きがあり、12星座と同じように、私たち人間とも呼応しています。また、各星座には守護星が結びつけられています。このコラムでは、シーズンの星座の守護星をピックアップし、あなたの中にあるさまざまな「私」にチューニングしていきます。現在の蠍座シーズン(今年は10/23~11/21)は、蠍座を守護する「冥王星」にまつわるお話です。冥王星はコワイ?太陽系のいちばん外側、暗闇の中を孤独に周る冥王星は、まるで冥界への扉のようです。「死と再生」「根底からの変容」「人知を超えた力」を司るこの天体は、私たち人間にとって少し“コワイ”と感じられる存在かもしれません。冥王星は、深い欲望や恐れを象徴し、魂の進化を促す力を持っています。心の奥で本当に求めていることには、たいてい恐れの感情がセットになっています。どんなに望む方向への変化であっても、それは肉体をもつ私たちにとって負荷のかかること。なぜなら冥王星の司る「変容」とは、「慣れ親しんだものの死」「これまでの私の死」でもあるからです。冥王星は、前世や家系に受け継がれるカルマ(業)とも深く関わっています。カルマとは、原因と結果の法則。神秘哲学者ルドルフ・シュタイナーはこの法則を「カルマの恵み」と表現しました。“みなさんが人生においてなんらかの不正を働くとします。それがそのままの形で人生の中に残るならば、「もし不正を行わなかったら前へと進めたはずの歩みを失ってしまった」ということを意味します。不正を犯すたびに、人間は目標に向けた歩みを一歩ずつ失っていくでしょう。そして何歩も後退することになるのです。カルマとは恐れるものではなく、人間がそれを与えられたことを宇宙の計画に感謝すべきような力なのです。”蒔いた種は自ら刈り取り、失敗や過ちを学びとして魂が成長していく、それがカルマの法則です。私たちは毎晩眠り、そして目覚めるたびに、小さな「死と再生」を体験しています。昨日の疲れが今日の身体に残ることもあれば、前夜の準備が翌朝のスムーズさにつながることもあります。それと同じように、前世の原因が今世の結果として現れ、清算のために冥王星は、隠れたものや見えない影を照らし出します。冥王星は約248年かけて太陽の周りを一周します。現代人の平均寿命をおおよそ80年とすると、そのおよそ3倍。つまり、カルマは「親・子・孫」の3世代でひとつのサイクルを描くとも考えられます。「七代先まで祟ってやる」という言い伝えを耳にしたことがあるかもしれません。この少し恐ろしい言葉の起源には諸説ありますが、占星術の観点から見ると興味深い対応が見えてきます。平安時代、平均寿命は約35歳前後。その7倍が、ちょうど冥王星の公転周期にあたります。当時の人々にとって「七代先まで続く祟り」とは、冥王星のカルマ作用を象徴していたのかもしれません。もしかすると、この言い伝えはそんな時代背景から生まれたのかもしれませんね。月のひと巡りは約28日(ムーンリターン)。木星なら約12年(ジュピターリターン)。人生の節目を象徴する土星の回帰(サターンリターン)は約29年。そして冥王星の回帰(プルートリターン)は約248年。その壮大なスパンは、個人を超えて国家や時代そのものに影響を及ぼします。1776年に誕生したアメリカ合衆国は、2021〜2024年にかけて初めてのプルートリターンを迎えました。その影響はまさに“国の再生”として世界中に広がっていきました。冥王星は平均して約20年でひとつの星座を通過します。その変化はまるで音楽の「通奏低音」。根底に流れる響きが変わると、同じメロディでも曲全体の雰囲気が一変します。2024年11月、冥王星は本格的に水瓶座へ移行しました。あなたの人生にも、新しい低音の響きが生まれているかもしれません。また2035年までの約10年間、冥王星は毎年「通常の軌道から外れて運行する期間」を迎えます。これはおよそ70年ぶりの天体現象で、「冥王星のアウト・オブ・バウンズ」と呼ばれています。今年は8月末から始まり、11月24日頃までがその期間。変容を司る冥王星がさらに勢いを増し、枠を逸脱する、それは時代が根本から変容していくサインです。水瓶座に滞在する冥王星は、テクノロジーという水瓶座的象徴を通して、社会の基盤をスピーディーに革新させていくでしょう。一人ひとりにおいても、これまでの常識にとらわれず「自分らしい生き方」を選ぶ流れが加速し「自らの枠を超える」こともテーマとなります。心の奥底にある「本当」は、どんなに見て見ぬふりをしても、人生のどこかで必ず向き合うことになります。冥王星は、限界的な体験を通して魂の本質をむき出しにし、本物だけを残していきます。ピンチの瞬間に真の力が目を覚ますことってありますよね、それを「火事場の馬鹿力」と言いますが、それはまさに「火事場の冥王星力」なのです。魂の欲望というと、何か壮大なもののように思えるかもしれません。けれどそれは、日常の本音を大切にしたり、小さな欲求を満たしたりすることの延長線上にあります。日々の中での小さな勇気、小さな破壊、それが冥王星とお友達になるコツなのかもしれません。そして、崩壊は再生の前触れ。あなたの中ではすでに、新しいあなたが生まれているのです。次回の射手座シーズンは、射手座の守護星・木星のお話です。どうぞお楽しみに!